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責任感知型安全論(RSS)について:自律走行車の安全性を確保する5つの原則

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車の運転免許を取得する時にまず習うのが交通規則ですが、この規則は一般的に、次の2つのタイプに分類されます。

  1. 明示的規則:制限速度や一時停止標識ではどのように行動すべきかなど、規則が明確なもの。
  2. 黙示的規則:安全な車間距離を保つ方法や、状況に合わせて安全に運転するにはどのようにすべきかなど、規則が文化的な背景と共通認識に大きく関係するもの。

 

自律走行車(AV)の場合、明示的規則に従うのは難しくありません。AVは決して制限速度を超えず、一時停止標識では必ず停止します。しかし、黙示的規則を理解したうえでそれに従うとなると、簡単ではなくなってきます。なお、規則そのものは、交通システムを安全に機能させるために、許容できる運転慣習の暗黙的な理解の一部から定義されています。

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それでは、このように主観的な暗黙の交通規則を、どのようにすれば機械が正確に解釈できるようになるのでしょうか。

モービルアイは2017年、Responsibility-Sensitive Safety(RSS:責任感知型安全論)を提案する学術論文を発表しました。この安全性確保のための数式モデルが、こういった黙示的規則をデジタル化するためのフレームワークを提供することで、自動運転車と人間のドライバーを道路上で共存させることができます。

人間であれば、運転技能も安全運転における常識の程度も異なる、さまざまなドライバーに運転免許が交付されますが、AVには人間のドライバーよりもはるかに高いレベルで運転できることを証明することが求められます。安全に運転できる能力を証明する検証方法を示さない限り、AVが運転資格を得ることはありません。テクノロジー分野のリーダー企業、自動車メーカー、政府機関、そして社会が協力し、安全運転とはどのようなものかを示すスタンダード(標準規格)を定義するとともに、自律走行車の安全性の評価と検証に使用できるマトリクスを定める必要があります。インテルはこの目標に向けて、AVにとっての安全運転が意味するものについて業界が足並みをそろえるスタートポイントとして、RSSというテクノロジーに中立的なフレームワークを提供しています。

 

Responsibility-Sensitive Safetyとは?

RSSでは、一連の数式と透明性が高く検証可能な論理規則を使用して、人間が認識する安全運転を形式化しています。これらの原則は、人間ドライバーが安全運転とみなす常識的な行動特性を定義します。AVが事故の原因とならないよう十分な注意のもとに走行でき、ほかの車両のミスを補完できるぐらい慎重に走行できるレベルが目標です。

 

あらゆるAVシステムとの互換性を備えたRSS

RSSはテクノロジー的に中立です。つまり、あらゆる自律運転システムに引用することが出来、安全性における一貫性が保たれます。世界中で適用可能なAVの安全性基準を確立するため、インテルは業界、政府、非政府機関、標準化団体、学界の全体でステークホルダーと協力すべく取り組んでいます。

 

RSSが実現する、人間のドライバーと共存した走行が可能なAV

RSSはAIベースの意思決定とは別の層として機能するため、AIベースの意思決定の長所を最大限に活かしながらもAV は綿密に定義された安全ルールの範囲内で走行することが出来るように設計されています。これは、ほかの道路使用者をイライラさせるほど注意深く走行するような自動運転車両とは対象的です。人間のドライバーと共存して走行するAVを業界が実現できなければ、代替として社会が受け入れる可能性は低くなるかもしれません。

この目標を達成するため、RSSは次の5つの安全性の原則に従っています。

 

原則 1:前方の車両に衝突しない(前後方向距離)

初心者ドライバーは、反応までに十分な時間と空間を設けるために、前方の車と「2~3秒相当の車間距離をとること」と教えられます。このシンプルな教えは、前後車両の速度、ドライバーの反応時間、前方を走る車の制動能力の背景となる数学や物理学を理解していなくても機能します。

RSSでは、この原則を数式として形式化しました(上図)。つまり、2台の車間距離が dmin未満となると、自動運転車両が適切に反応し、安全な車間距離に戻るまで、または車両が完全に停止状態になるまでブレーキがかかります。

 

規則 2:無謀な割り込みをしない(横方向距離)

安全志向の人間のドライバーは、決められた車線内で位置を保ち、車線の合流時には危険な割り込みを避けます。原則2では横方向の安全な車間距離を形式化しています。これにより、危険なドライバーが車線を変更すると、AVは横方向の安全性が脅かされる危険性に気づくことができます。

この原則は、上の図に示されるとおり形式化され、人間のドライバーが自然に行う車線内での横方向の動きも考慮されています。

例えば、別の車がそのスペースに進入してきたり占有してきた場合、人間のドライバーは最初にハンドルを切って衝突を回避し、もう一方の車に対して横方向の速度を抑えて、安全な車間距離に戻るまで横方向に移動し続けます。これはAVにとっても同様に、RSSで定義された安全な横方向距離が保持できなくなった場合の適切な反応となります。

 

原則 3:優先通行は譲られるもので、自分から取りにいくものではない

標識などではっきりと識別できる道路ならば、どちらが優先通行かは明確で、交差する時の経路の優先順位が車線、標識、信号によって明示されています。ただし、どちらが優先か明確でない場合、人間のドライバーが互いに交渉しなければならないこともあります。AVの場合、機械が同様の交渉を行って同じ結論にたどり着くように、この交渉を形式化する必要があります。

例えば、上の図で示されているのは、一時停止の標識がないT字路です。一時停止の標識がある側のドライバーは、一時停止の標識がない側の車両に優先権を譲らなければなりませんが、そうしないドライバーもいます。対向車両が一時停止の標識を無視して危険な状況が生じた場合でも、AVはそれに応じて反応しなければなりません。理論上では通行権があったとしても、規則によって通行権が与えられているという理由だけで衝突事故を起こすわけにはいきません。

 

規則 4:視界が限られているエリアでは慎重に走行する

運転中はさまざまな要因が視界に影響します。天候に加えて、道路の地形、建物、他の車両なども、道路やほかの道路使用者に対する視界を妨げます。人間のドライバーは、周囲の環境に応じて自然に自分の動作を制限し、予測できない危険を回避しようとします。

幹線道路では、歩行者が突然飛び出してくるとは予測しづらい一方で、学校の近くやその近隣の街路では大いに考えられることです。またドライバーにとって、歩行者が道路に飛び出してくることも予期しながら運転するのは当然のことです。ドライバーは、横断歩道に近づいた時、道路沿いに駐車している車の横を通過する時は特に慎重に走行しなければなりません。安全を確保するため、AVも同様の状況を想定して、視界が制限されたエリアでは警戒する必要があります。

 

規則 5:別の衝突を引き起こす危険がない限り、必ず衝突を回避する

原則1~4では形式的な定義を定め、どのような状況が危険なのかということと、AVのとるべきの正しい反応を明確に示しました。原則5では、危険な状況があまりにも突然に発生したために、より回避的な行動を取らない限り衝突が避けられない危険性が高い状況を扱います。原則5では、AVが安全かつ合法的に別の衝突を引き起こさずに衝突を避けられる場合はそうしなければならないと明示しています。

例えば、上図のように、前方の車が突然隣の車線にそれたことで道路上に物体が現れた場合、この障害物の出現が後続車の車停止には時間的に間に合わないことがあります。ただし、隣の車線が空いていれば、後続車は前方の車に続いて回避行動を取り、事故発生を防ぐことができます。

 

累積走行距離にとらわれない

RRSでは、何百万マイルもの走行をしなくても検証できる安全性テストを可能にします。統計的な論証は、考案者が設計の安全性を正式に検証できない場合に用いる、AVの安全性を主張する最終的な手段です。数式の集合であるであるRSSは、その正しさが立証されているため、実装が仕様に一致していることを保証する場合にのみテスト実施が必要となり、検証の負荷が大幅に軽減されます。

 

RSSが今日の道路上の安全性を向上させる

RSSは、車自体が安全走行をする方法を示すためのフレームワークですが、この形式化された概念を、人間のドライバーが運転中の時にも、車両を安全な運行範囲内に維持するために適用することができます。例えば、同じ安全性の原則を適用することで、RSSが衝突被害軽減ブレーキ(AEB)を向上させるプロアクティブな安全メカニズムにもなります。従来のAEBシステムにRSSを適用した自動予防ブレーキ(APB / automatic preventive braking)は、形式を用いて車両が危険な状況に入る瞬間を捉えます。そのタイミングで、速やか且つ穏やかにブレーキを適用すれば、車両を安全な位置に戻すことが可能です。従来のように最大限の制動力を働かせて目前に迫る衝突を待つ必要はないのです。この予防的アプローチをとれば、停止間隔を十分に残すことができ、緊急停止が起きたとしても、ブレーキングと回避の連鎖反応を防ぐことができます。

 

RSSへの支持の拡大

2017年のRSSの提案以降、インテルは世界各国の政府規制機関やテクノロジーのパイオニア企業に働きかけ、このモデルに対するフィードバックを収集してきました。実環境での有効性は、エルサレムの交通量の多い路上を走るインテルのAV開発車両によって実証されています。RSSはまた、検証可能な安全性のフレームワークに向けて、第一歩を踏み出したインテルを称賛する、世界の業界各社や標準団体からの支持を得ています。

  • Baidu: 中国のテクノロジーリーダー。同社の自律運転プラットフォームApolloの一部として RSSを採用し、2019年には世界初となるオープンソースのRSS実装を取り入れました。
  • Valeo: 欧州を拠点とする自動車部品メーカー。RSSの研究調査に寄与し、欧州、米国、中国にまたがったAVの安全基準の普及に向けて、指針とテクノロジーの面で協力しています。
  • China ITS Alliance: 中国運輸省下の標準化団体。今後のAVの安全性基準を策定するフレームワークとして、RSSを採用するという提案を承認しています。
  • RAND Corp.: 大手シンクタンク。最近の報告書の中で、RSSはAVにおける安全性を定義する「運行範囲」という主要手段であると言及。AVにとって「自動車運転技能」を実現するうえで重要な側面としています。
  • Arizona Institute for Automated Mobility: AVの安全性を検証し、実現を目的に設立された団体。研究調査とテストの基盤としてRSSを使用しています。
  • Collaborative Research Institutes: Intel Labsと提携関係にある研究機関。中国と欧州に設立され、RSSをリサーチの基盤として使用し、AVの安全性と信頼性の向上にに取り組んでいます。

 

RSSをより深く知るには、モービルアイの学術論文全体(Vision Zero: Can Roadway Accidents be Eliminated without Compromising Traffic Throughput?)をご覧ください。

タグ: 2019 Mobileye Investor SummitMobileyeRSS

 

インテルについて

インテルは業界のリーダーとして、世界中の進歩を促すとともに生活を豊かにする、世界を変えるテクノロジーを創出しています。ムーアの法則に着想を得て、顧客企業が抱える大きな課題を解決する半導体製品を設計・製造し、その進化に向けて日々取り組んでいます。クラウド、ネットワーク、エッジ、あらゆるコンピューティング機器のインテリジェント化によりデータの価値を最大化し、ビジネスと社会をより良く変革します。インテルのイノベーションについては、https://newsroom.intel.co.jp またはhttps://intel.co.jpをご覧ください。
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